現代社会と福祉の科目はこれまでの福祉政策の歴史の変遷が詰め込まれているため、福祉を学ぶ上では大変重要な科目です。しかし、幅広い内容の理解が必要なので高得点を狙うのは難しい科目でもあります。よって、ここでも出題頻度が高い頻出キーワードをしっかり覚えることがカギとなります。受験生が選ぶ頻出キーワード第1位をこの記事では紹介します。
・第1位キーワードの覚え方。
以下、目次となります。
『現代社会と福祉』受験生が選ぶ頻出キーワード第1位は?
この言葉が第1位に選ばれました。現代社会を勉強していると必ず出てくる頻出キーワードと言えるでしょう。「3つの」と言われるだけに、3種類に分類することがでっき、それぞれがどのようなものかを覚えること。違いはどのようなところか。また、このレジームに該当するのはどの国なのかをしっかりと覚えてください。
この分類を行ったのはアメリカの経済学者であるエスピン・アンデルセンという人物です。この名前は超頻出キーワードとなるので、エスピン・アンデルセンが福祉国家を3つに類型化したということをまずは頭に入れておきながら、3つの違いを見ていきましょう。
エスピン・アンデルセン
アメリカの政治経済学者であるエスピン・アンデルセンは脱商品化、社会的階層化という2つの指標を作り、それを元として福祉国家を「自由主義レジーム」、「保守主義レジーム」、「社会民主主義レジーム」の3つに類型化しました。この考えは有名な著書「福祉資本主義の3つの世界」(1990年)で述べられています。
3つのレジームはもちろん大切ですが、その3つの類型に至ることとなった、2つの指標も重要です。脱商品化、社会階層化という指標です。ここも社会福祉士の国家試験では狙われやすいところです。
脱商品化とは、労働力を商品と考えた場合、どれだけ「商品」から脱しているか。つまり、労働力なしに生きていける社会なのかかどうか。を表しています。労働を安売りしないといけない(労働なしでは生きていけない)場合、脱商品化は低いと判断されます。
社会階層化とは、国民が等しく福祉を受けられるかどうか。を表します。誰でも同じように福祉を受けられれば、階層化は進んでいないと考えられるため、社会階層化は低いと判断されます。
自由主義レジーム
アメリカやカナダを代表とするのが自由主義レジームです。これらの国では脱商品化が低く、社会階層化は高いとされています。
脱商品化が低いということは、労働なしでは生きていくことが困難だ。ということを意味します。働かざるもの食うべからずと言ったところでしょうか。そのため、格差社会となり社会の二極化が起こりやすい点が特徴です。
階層化は高い国となります。国民に等しく平等に福祉が与えられない国家なのです。公的な医療保険がないため、自分で保険に入っておかないと大変なことになります。全てを自己責任で!という考え方ですので、富める者は手厚い保障を受けられ、貧しいものは保障も受けにくくなっています。
アメリカンドリームを追う事ができ一攫千金を狙えますが、全ては自己責任の考えによりますから、GAFAのCEOに代表されるような超富裕層が生まれる反面、新型コロナウィルスのような危機が起こると多くの感染者や死亡者を生み出すという欠点を備え持っていると言えます。
社会民主主義レジーム
スウェーデンやノルウェー、デンマークを代表とするのが社会民主主義主義レジームです。これらの国では脱商品化が高く、社会階層化は低いとされています。
脱商品化が高いということは、労働なしでも生きていくことが可能である。ということを意味します。国民の国家への負担(税金)は高負担ではありますが、その分手厚い保障を受けれる高福祉国家であると言えます。
階層化が低いということは、どんな職業の人でも平等に福祉が受けられるということを意味します。例えば、医療費はスウェーデンだと18歳まで全額無料です。18歳以上でも上限額が決められていて上限額以上の医療費は払い戻されます。
このように貧富の差が低く、平等に福祉を受けられる点に大きな特徴を持ちます。アメリカを代表とする自由主義レジームと真逆と考えるといいでしょう。
保守主義レジーム
ドイツやフランスを代表とするのが保守主義主義レジームです。これらの国では脱商品化、社会階層化はともに2つのレジームと比較すると中位とされています。
脱商品化はどちらかと言うと高いですが、社会階層化も高いと言われています。
社会保障の中核は社会保険制度となっています。税金を使わず、お互いが折半する構造(搬出性)です。社会保険制度による保障はある程度充実していますが、職業による差が大きいため、階層化が高くなってしまっています。
職業によっては手厚い保障を受けられるが、違う職業であれば保障の手薄くなっていたりもします。公務員が優遇されているとも言われています。
合格者はこう覚える!
以上をまとめますと、
福祉レジーム | 自由主義レジーム | 社会民主主義レジーム | 保守主義レジーム |
モデル国家 | アメリカなど | スウェーデンなど | ドイツなど |
原理 | 選別主義 | 普遍主義 | 搬出主義(折半) |
手法 | 自己責任 | 税金の再分配 | 社会保険 |
脱商品化 | 低 | 高 | 中 |
社会階層化 | 高 | 低 | 中 |
自由主義レジームと社会民主主義レジームが正反対と覚えて、その間に保守主義レジームだと覚えておきましょう。
ちなみに我が日本は、アメリカに代表される自由主義レジームとドイツに代表される保守主義レジームの丁度中間だと考えられています。
- この記事でのポイント
・エスピン・アンデルセンは脱商品化、社会的階層化という2つの指標より福祉国家を3つに類型化。
・アメリカを代表とする自由主義レジームは脱商品化が低、社会階層化は高。
・スウェーデンを代表とする社会民主主義レジームは脱商品化が高、社会階層化は低。
・ドイツ代表とする自由主義レジームは脱商品化、社会階層化は中。
・日本は、自由主義レジームと保守主義レジームの中間。