社会保障の科目は、年金や各種保険など私たちの生活の中で関わりの深い内容であるため学習としてはやりやすい科目だと思います。ただし、知識を問う問題が多いため学習の量によって差が出やすい科目でもあるので、しっかりと学習を重ねてある程度の点数を狙える科目にしておきましょう。この科目も最初は頻出のキーワードから押さえていくことと致しましょう。受験生が選ぶ頻出キーワード第2位をこの記事では紹介します。
・第2位キーワードの覚え方。
以下、目次となります。
『社会保障』受験生が選ぶ頻出キーワード第2位は?
この言葉が第2位に選ばれました。社会保障における「併給調整」とは、原則では受け取ることができない種類の違う給付を、例外的に受け取れるようにしたり、選択して受け取れるようにしたり、または片方を減額したりして給付したりする制度のことです。
併給調整では優先順位が高いものから低いものがあります。一般的には、損害賠償>業務災害補償(労災保険)>社会保険(労災保険以外の社会保険)>社会福祉(児童福祉法、老人福祉法など)>公的扶助(生活保護)となります。
優先順位は上述となりますが、例外もいろいろと出てきます。以下にまとめていきます。
労災保険と他の制度との調整
①国民年金、厚生年金との調整
労災保険の年金、その他の給付と国民年金、厚生年金が併給される場合には、労災保険側が減額されます。上述の順番とは違うので例外的なものとして覚えましょう。
すなわち、労災保険の保険給付が減額されるのは、国民年金法、厚生年金法による給付と併給される場合のみです。
②障害(補償)一時金(労災保険)と障害手当金(厚生年金)との調整
労災保険の障害(補償)一時金と厚生年金の障害手当金を同時に受ける権利を得た場合には、上述の優先通りとなります。つまり、障害手当金は支給されず、障害(補償)一時金のみの支給となります。
③労働基準法との関係
労働基準法の災害補償規定の事由について労災保険法から保険給付が行われる場合、使用者は労働基準法の災害補償の責任が免除されます。ただし、労災保険の保険給付がなされない場合には、使用者には労働基準法の災害補償の責任が免除されず、補償が必要となります。
例としては、労災保険の休業(補償)給付は3日間は待期期間として保険の給付は行われません。この間は使用者が労働基準法の則り補償を行わねばなりません。
④医療保険との関係
負傷、疾病などの原因が職務中であった場合も労災保険が上述通り優先され、併給できません。つまり、医療保険からの給付は行われずに労災保険から給付が行われることとなります。
⑤介護保険との関係
労災保険の介護(補償)給付と介護保険の給付のどちらもが受けられる場合は、労災保険が優先されます。ただし、介護保険の区分支給限度額を超えない場合にはその差額を介護保険給付にて受給することとなります。
つまり、労災保険と介護保険は併給は可能ですが、あくまでも労災優先で介護保険の限度額に満たない場合はその差額分のみ介護保険から給付を受けることとなります。
医療保険と他の制度との調整
①労災保険法との関係
上述通り、労災保険と医療保険が同時に行われ得る場合には労災保険が優先されます。
②生活保護法との関係
生活保護の被保護者は国民健康保険、後期高齢者医療保険の適用除外となるため、生活保護が優先されます。これも、上述の優先順位とは違うので例外として覚えておきましょう。
③介護保険法との関係
介護保険と医療保険の場合は、介護保険が優先されます。ただし、以下の場合は、医療保険の訪問看護、訪問リハビリテーションが優先します。
ⅰ)末期の悪性腫瘍、その他厚生労働大臣が定める疾患等の患者。
ⅱ)急性憎悪により一時的に頻回の訪問の必要があると認めた者。
介護保険と生活保護との調整
生活保護を受けている者も、65歳以上の方(第1号被保険者)と40歳以上65歳未満の医療保険加入者(第2号被保険者)は、介護保険の被保険者となります。
介護保険の被保険者である場合には、自己負担部分(介護費の1割分)が生活保護から介護扶助として支給されます。
介護保険の被保険者以外(医療保険未加入)の者の場合には、介護扶助が10割全額を給付しますが、他法令等による給付がある場合には、その給付を優先します。
年金保険と雇用保険との調整
雇用保険から失業等給付(基本手当)を受けられる場合には、特別支給の老齢厚生年金は支給停止されます。
合格者はこう覚える!
上述の損害賠償>業務災害補償(労災保険)>社会保険(労災保険以外の社会保険)>社会福祉(児童福祉法、老人福祉法など)>公的扶助(生活保護)の優先順位をしっかり覚えましょう。
特に労災保険と他制度の比較は出題されやすい分野です。原則、労災保険優先ですが、例外として、覚えておくべきものは、国民年金、厚生年金と労災保険の場合です。
国民年金、厚生年金の受給権者の場合は国民年金、厚生年金が優先して支給され労災保険が減額されるので、上述の優先順位とは異なります。。
また、生活保護は他法他施策が優先されますが、医療保険との関係においては、保護受給者は医療保険の適用除外なため、生活保護の医療扶助が優先的に行われる点にも注意しましょう。
- この記事でのポイント
・労災保険の年金、その他の給付と国民年金、厚生年金が併給される場合には、労災保険側が減額。
・労災保険の障害(補償)一時金と厚生年金の障害手当金を同時に受ける権利を得た場合には、障害手当金は支給されず、障害(補償)一時金のみの支給。
・労働基準法の災害補償規定の事由について労災保険法から保険給付が行われる場合、使用者は労働基準法の災害補償の責任が免除。
・医療保険と労災保険でも労災保険が優先される。
・医療保険と生活保護では生活保護が優先。
・介護保険と医療保険の場合は、介護保険が優先。
・介護保険の被保険者である場合には、自己負担部分(介護費の1割分)が生活保護から介護扶助として支給。
・介護保険の被保険者以外(医療保険未加入)の者の場合には、介護扶助が10割全額を給付。