福祉行財政と福祉計画の科目は、行政に関する知識をある程度有していないとイメージがつきずらい科目です。ただし、いったん理解が深まるとひねった問題よりも知識力を問う傾向がある科目ですので、ある程度の得点も期待できるようになります。この科目も最初は頻出のキーワードから押さえていくことと致しましょう。受験生が選ぶ頻出キーワード第5位をこの記事では紹介します。
・第5位キーワードの覚え方。
以下、目次となります。
『福祉行財政と福祉計画』受験生が選ぶ頻出キーワード第5位は?
この言葉が第5位に選ばれました。介護保険事業(支援)計画は、市町村と都道府県に策定義務があるもので、市町村が作る必要がある計画の方を介護保険事業計画、都道府県に作る必要がある計画の方を介護保険事業支援計画と呼ばれています。
その名の通り、介護保険法にその根拠が書かれており、市町村にも都道府県にも策定が義務化されている点に注意しましょう。
また、覚える上で重要なのは、質問文を読んで、市町村作成の介護保険事業計画の方のことなのか、都道府県作成の介護保険事業支援計画の方のことなのかを言葉や文章のニュアンスで分かるようにすることです。
三年を一期
介護保険法の第117条を見てみましょう。
第百十七条 市町村は、基本指針に即して、三年を一期とする当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に関する計画(以下「市町村介護保険事業計画」という。)を定めるものとする。
ここでは、市町村の策定義務のある介護保険事業計画について書かれていますが、大切なのは、『三年を一期』とする点です。頻出事項ですので確実に覚えてください。
となると、都道府県の介護保険事業支援計画の方と比べて違いがあるのでしょうか?
介護保険法の118条を続いて見てみましょう。
第百十八条 都道府県は、基本指針に即して、三年を一期とする介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施の支援に関する計画(以下「都道府県介護保険事業支援計画」という。)を定めるものとする。
こちらも『三年を一期』とされています。よって、違いはありません。介護保険事業(支援)計画はは共に三年を一期に策定されます。ここは三年という期間さえ間違えなく覚えておけば問題ありません。
義務事項
再び、介護保険法の117条を見てみましょう。第1項では、上述の通り、市町村が3年を一期として市町村介護保険事業計画を定めなければならない。との記載でした。第2項の第1号まで見ておきましょう。
一 当該市町村が、その住民が日常生活を営んでいる地域として、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件、介護給付等対象サービスを提供するための施設の整備の状況その他の条件を総合的に勘案して定める区域ごとの当該区域における各年度の認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護に係る必要利用定員総数その他の介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込み並びにその見込量の確保のための方策
続いて、118条です。こちらは、第1項にて、都道府県が3年を一期として都道府県介護保険事業支援計画を定めなければならない。との記載でした。
2 都道府県介護保険事業支援計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 当該都道府県が定める区域ごとに当該区域における各年度の介護専用型特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護に係る必要利用定員総数、介護保険施設の種類ごとの必要入所定員総数(指定介護療養型医療施設にあっては、当該指定介護療養型医療施設の療養病床等に係る必要入所定員総数)その他の介護給付等対象サービスの量の見込み
内容は長いので頭に入りにくいですが、簡単に書くと
・市町村介護保険事業計画
⇒市町村が定める区域ごとの各年度の介護給付等対象サービスの種類ことの量の見込み
・都道府県介護保険事業支援計画
⇒当道府県が定める区域ごとの各年度の介護給付等対象サービスの量の見込み
をそれぞれの計画の中で定めないといけないとしています。
市町村の場合は、『種類ごとの量の見込み』となっているのに対し、都道府県の場合は『量の見込み』とざっくりです。この違いは頭に入れておきましょう。きめ細かいのが、より近い立場にいる市町村であるために『種類ごと』に決めないといけないとしているのです。
一体と調和
介護保険法の117条に戻りましょう。市町村介護保険事業計画の方です。第4項、第5項も頻出事項です。第4項、第5項を見てみましょう。
4 市町村介護保険事業計画は、老人福祉法第二十条の八第一項に規定する市町村老人福祉計画と一体のものとして作成されなければならない。
5 市町村介護保険事業計画は、社会福祉法第百七条に規定する市町村地域福祉計画その他の法律の規定による計画であって要介護者等の保健、医療又は福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
続いて、118条です。こちらは、都道府県介護保険事業支援計画の方になります。
4 都道府県介護保険事業支援計画は、老人福祉法第二十条の九第一項に規定する都道府県老人福祉計画と一体のものとして作成されなければならない。
5 都道府県介護保険事業支援計画は、医療法第三十条の四第一項に規定する医療計画、社会福祉法第百八条に規定する都道府県地域福祉支援計画その他の法律の規定による計画であって要介護者等の保健、医療又は福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
介護保険事業(支援)計画は、市町村や都道府県作成の老人福祉計画と一体のものとして作らないといけないといけません。
また、介護保険事業(支援)計画は、市町村や都道府県作成の地域福祉(支援)計画と調和が保たれたものでなければならない。
とされているのです。この調和と一体も社会福祉士の国家試験では頻繁に狙われる内容となるのでしっかりと頭に入れてください。
定め、変更しようとするとき、変更したとき
介護保険法の117条に再度戻ります。市町村介護保険事業計画の方です。第4項、第5項も頻出事項です。第7項、第8項を見てみましょう。
続いて、118条です。こちらは、都道府県介護保険事業支援計画の方になります。こちらは第6項です。
6 都道府県は、都道府県介護保険事業支援計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを厚生労働大臣に提出しなければならない。
市町村は策定や変更を行おうと思うときは、必ず、都道府県の意見を聞く必要があります。そして、策定、変更後は出来た計画を都道府県知事に提出する必要があります。
一方、都道府県はお上に意見を聞く必要はありません。策定、変更後には厚生労働大臣に提出すればよいとだけ書かれています。ここも重要ですので間違えないように覚えましょう。
合格者はこう覚える!
先にも述べましたが、市町村の策定する介護保険事業計画と、都道府県が策定する介護保険事業(支援)計画を比較して覚えましょう。
市町村 | 都道府県 | |
介護保険における計画 | 介護保険事業計画(義務) | 介護保険事業支援計画(義務) |
介護給付等対象サービスに関する策定義務 | 『種類ごとの』量の見込み | 量の見込み |
老人福祉計画との関係 | 一体 | 一体 |
地域福祉(支援)計画との関係 | 調和 | 調和 |
定め、変更しようとするとき | 都道府県の意見必要。 | 特に必要事項なし。 |
提出先 | 都道府県知事 | 厚生労働大臣 |
- この記事でのポイント
・市町村が作る必要がある計画の方を介護保険事業計画。
・都道府県に作る必要がある計画の方を介護保険事業支援計画。
・護保険事業(支援)計画はは共に『三年を一期』に策定される。
・市町村介護保険事業計画は介護給付等対象サービスの種類ことの量の見込みを定める必要があるが、都道府県介護保険事業支援計画の場合は量の見込みのみ。
・老人福祉計画と一体のもの、地域福祉(支援)計画と調和が保たれたものでなければならない。
・市町村は単独での策定や変更は行えず、都道府県の意見を聞く必要があり。